研究分担者 |
岡本 新一郎 京都大学, 医学部, 助手 (40160717)
三輪 聡一 京都大学, 医学部, 助手 (40157706)
谷口 隆之 京都大学, 医学部, 講師 (10111957)
成宮 周 京都大学, 医学部, 助教授 (70144350)
倉橋 和義 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助教授 (10025653)
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研究概要 |
私たちは, イヌ脳動脈標本において, 末梢動脈標本とは異なり, アセチルコリン(ACh)が内皮細胞依存性収縮反応をひきおこし, 内皮細胞由来動脈収縮物質がアラキドン酸代謝産物であるTXA_2様物質であろうことを報告してきた. 本研究の目的は, ヒトクモ膜下出血時, 脳血管攣縮をともなうことが知られていることから, クモ膜下出血患者の脳脊髓中に, 脳動脈内皮細胞活性化因子が存在するかどうか, またその候補物質を明らかにすることにある. クモ膜下出血患者の脳脊髓液試料は, イヌ脳動脈内皮細胞正常標本において収縮反応をひきおこしたが, 内皮細胞除去標本では収縮反応をひきおこさなかった. 一方, 血液の混入しない透明な脳脊髓液試料は, 両標本において殆ど収縮反応をひきおこさなかった. この内皮細胞依存性収縮反応は, フォスフォリパーゼ阻害薬, サイクロオキシゲナーゼ阻害薬, リボオキシゲナーゼ阻害薬, TXA2合成阻害薬, TXA2拮抗薬などにより抑制された. 血液が脳脊髓液と混じる際, その脳脊髓液中に存在すると予想される内皮細胞活性化因子候補を同定するため, ノルアドレナリン, ATP, ADP, AMP 収縮反応の内皮細胞依存性を検したところ陽性であった. また, Ca^<2+>イオノフォアであるA-23187の収縮反応も内皮細胞依存性であり, しかもその反応は, TXA_2の透導体であるSTA_2収縮反応に比しニフェジビンにより, より強く抑制された. 以上の結果から, ヒトクモ膜下出血にともなう脳血管攣縮発現には, 血液と脳脊髓液が混じ, 脳脊髓液中に内皮細胞を活性化する因子が生成されること, 及び内皮細胞由来TXA_2様物質遊離にCa^<2+>動員の関与することが示唆された. 脳血管攣縮は, 血液および脳脊髓液からの内皮細胞活性化因子生成を抑制する薬物, および内皮細胞活性化Ca^<2+>動員ならびに脳動脈特異的Ca^<2+>動員拮抗液により抑制される可能性が考えられる.
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