研究概要 |
1.90%膵切除ラットは尿糖, 耐糖能異常, 残存膵組織中のランゲルハンス島β細胞の変性を示し, インスリン依存性糖尿病の好モデルであると認められた. 2.スーパーオキシドジスムターゼなどのラジカルスカベンジャーはアロキサンによる膵β細胞DNAの切断とインスリン合成低下を防止し, 活性酸素を介した膵β細胞障害の予防に有効であった. 3.ニコチン酸アミド, 3-アミノベンズアミドなどの芳香族酸アミド化合物がアロキサンやストレプトゾトシンによるインスリン合成低下を防止し, 糖尿病の発症を阻止することが見い出された. さらに, 芳香族酸アミド化合物は90%膵切除ラット残存膵インスリン産生β細胞の再生を誘導し, 糖尿病状態を予防・改善することが明らかにされた. 4.芳香族酸アミド化合物の糖尿病発症阻止に最も有効な投与条件はニコチン酸アミドで500mg/kg体重/日, 3-アミノベンズアミドで100mg/kg体重/日であり, 長期連続投与による副作用の発生は認められなかった. 5.約500種類の芳香族酸アミド誘導体を化学合成し, インスリン依存性糖尿病モデル動物, 正常動物に経口投与して藥効試験, 安全生試験を行なった. その結果, ピリジルベンズアミドとくに3-アシルー(6-メチルー)2-ピリジルベンズアミドと3-ウレイドー(6-メチル)2-ピリジルベンズアミドが最も強力な糖尿病発症阻止活性と血糖降下活性(糖尿病改善作用)を示し, また最も低毒性であった. さらに, これらのピリジルベンズアミド誘導体は血小板凝集抑制作用, アルドースレダクターゼ阻害作用も示し, 糖尿病性二次障害(合併症)に対しても有効であることが示唆された. したがって, 本研究の当初計画は予定年度内に完全に達成され, 全く新しい総合的な糖尿病治療藥の開発が期待される.
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