血中アドレナリンおよびノルアドレナリンに関しては分析技術の発展により、その生理的意義あるいは病態生理的意義について多くの知見が蓄積されている。しかし、第3の内因性カテコールアミンであるドーパミンについては、主に分析上の問題点から末梢組織における代謝動態や生理的意義についての研究は遅れている。また、イヌ、サル、ヒトの血中ではドーパミンはその大部分が硫酸抱合体として存在しておりこの抱合体の生体内分布や代謝についての知見はさらに乏しい。 本研究では、生体材料中のドーパミンおよびその硫酸抱合体を高速液体クロマトグラフィーの手法で全自動分析する方法を開発し、薬理学的、病態生理学的研究に応用することを目的としている。 本年度は、分析システムの開発に主眼をおき研究を進め、その目的を達した。 ドーパミンの分析には固定相に強酸性イオン交換体を、ドーパミン硫酸抱合体の分析には固定相に弱塩基性イオン交換体をそれぞれ用い、パラアミノ安息香酸を用いたポストカラム誘導体化法で螢光検出するシステムを開発した。移動相の検討と検出系の感度と特異性の向上を計ることにより、100μlの血漿あるいは100mg以下の組織の抽出液を前処理することなく直接カラムに注入することによりドーパミンおよび2種の硫酸抱合体の異性体を感度よく分析することに成功した。従って、当初考えていた自動化全処理システムの開発は不必要となり、分析の簡易化と操作性の向上を同時に達成することができた。 その結果、この分析システムを用いて第二年度以降にも行う予定であったドーパミンおよび硫酸抱合体の生体内動態についても研究を進めることができ、イヌにおけるこれらの生体内分布、腎におけるクリアランス、硫酸抱合体の血中半減期、ヒトにおける血中、尿中レベルと食餌による変動などについて興味ある知見を得た。
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