落射型顕微螢光測光法では細胞内微量代謝物質の含量を超高感度に螢光定量するが、細胞形態観察を併用できることがフロー・サイトメトリーに優る点である。本年度はこの利点を生かして、従来試作開発してきた落射型顕微螢光測光装置を基本にし、(1)画像解析装置を試作し、現有の落射型自動ステージ顕微螢光測光装置に結合する、(2)この開発測光システムを用いて、細胞測光と関連した螢光画像解析を行い、細胞の機能と形態を併わせ定量解析する新しい細胞学研究手法を拓く、そして(3)癌細胞の研究に応用し、細胞測光法による客観的診断基準を確立することを目的とした。まず、画像解析装置の試作に関しては、細胞螢光像をフィルターで特定波長域の像に選択してモノクロ画像処理を行う方式とした。この試作のための設計思想と具体的計画、及び画像解析のためのソフトウェアの機能に関する基礎検討を重ねて、従来の開発経過に沿って日本光学(光機設計部 糸井信夫部長)に試作を発注し、目的とする装置(細胞螢光画像処理ユニット;高感度テレビカメラ付)を作り、測光装置に結合した。次いでこのシステムを用い、自動ステージに基づく同一細胞群の繰り返し測光による細胞螢光多重測光法の開発と、測光に相関した細胞螢光画像処理法、とくにこのためのソフトウェアの開発のための研究を進めた。これには自動ステージ測光法のために自作してきたBASICプログラムを基本にして、画像処理のための基本ソフトパッケージを組み込んで解析システムプログラムを作成している。この手法を用いた新しい細胞解析法を研究しているが、細胞増殖サイクルにおける細胞の機能と形態の両面からの詳細な解析法が可能となりつつあり、今後の広い細胞学研究手法が拓けたと考えられる。また、測光法による人癌細胞の診断法に関する解析研究も進め、我々の基準を把握できたと考えている。以上、本年度の研究計画はほぼ達成でき、さらに進歩すべく研究中である。
|