研究概要 |
或る種の自己免疫疾患の発症には、HLA-D領域の遺伝子産物(クラス【II】抗原)が関与しており、そしてその疾患発症の内因の一つをなしている。DNAレベルの解析から、現在明らかにされている4種類のクラス【II】抗原系(DR,DRW52・53,DQ,DP)以外にもクラス【II】抗原の存在が推測されている。これらのクラス【II】抗原分子の識別には、これ迄利用されてきた細胞障害性試験による検出では不充分であり、ラジオ・イムノアッセイ(RIA)が利用されている。しかし放射性同位元素の使用には諸種の制約がある。我々が行なって来たRIAによるクラス【II】抗原分子の解析を広く臨床病理領域に応用させるため、RIAに代る検出法の開発をすすめてきた。その結果、抗原と抗体との反応をペルオキシダーゼ標識抗マウスIg抗体又はビオチン化抗マウスIg抗体とアビチン化ペルオキシダーゼを用いて検出する3種類の酵素免疫測定法(EIA)を開発した。1.固相化EIA法:可容化クラス【II】抗原をウエルに固相化し、これを標的抗原としたEIA法である。種々の可溶化剤及び固相化こための緩衝液を検討し、デオキシコール酸で可溶化した抗原をトリス塩酸緩衝液を用いて固相化する方法が最も再現性ある結果を示した。この固相化プレートは3個月保存可能であり、そしてこの方法はクラス【II】抗原の免疫化学的解析に利用し得ることを確かめた。2.細胞性EIA法:標的抗原として細胞を用いる方法である。ミリタイターSVプレートを用いる方法、及び平底プレートを用いる方法を開発した。前者は、ウェル底部から吸引により細胞の洗滌が行われるため簡便に利用し得る方法である。後者では細胞をウエル底面に接着、固定させる操作を必要とするが、この細胞固定プレートは3個月間保存可能である特徴を有している。又、ビオチン・アビチン法を用いると、RIAに優る感度でクラス抗原を検出し得ることを確かめた。これらの方法は諸分野で利用されるものと思われる。
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