研究概要 |
【i】)ワクシニアウイルスDNAの中で、外来DNAを挿入し得る箇所として血球凝集素(HA)遺伝子が考えられる。本年度は、HA蛋白質のアミノ酸分析を行なう事によって、既に私が決定していたHA遺伝子の塩基配列が正しい事を確証した。 【ii】)次に、HA遺伝子内に、実際に、外来遺伝子を挿入し、発現させ得る事を例証するために、成人T細胞白血病ウイルスのenv遺伝子を二種類の方法でHA遺伝子内に挿入し、組換えワクシニアウイルスを作成した。この際種々のワクシニア株を用いた。 A)1つの挿入方法は、HA遺伝子のプロモーターの直下にenv遺伝子を挿入するものであり、他は、アメリカのMOSS博士の用いているプロモーターの下流に連結した後でHA遺伝子の中に挿入するものである。両者の方法で、env蛋白質を発現する組換えウイルスが出来た。発現量はHAプロモーターを用いた方法の方がやや多かったが、その詳細については、現在検討中である。これらは、免疫沈降法,蛍光抗体法で調べた。 B)実際にワクチンとして用いる時には、ワクシニア株の弱毒性と免疫賦与能との関係が重要である。この点を調べるために、WR株,LO株,LC16mO株,LC16m8株(順に弱毒化されている)をベースにした。種々の組換えウイルスを作った。 C)以上各種の組換えウイルスをウサギに接種して、抗env抗体価の上昇を調べた。現在のところ、m8をベースにした組換えウイルス接種により、低いながら抗体価が上昇する事が分った。 【iii】)他の外来遺伝子挿入可能箇所を捜すために、牛痘及びワクシニアのDNAをHind【III】又はSal【I】で切断し、大腸菌のプラズミドのPUC18及びPUC13にクローニングした。現在、ハイブリッドアレスト法により、A型封入体遺伝子のマッピングを進めている。
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