研究概要 |
昭和60年度の研究目的とした多数の検体を処理し、血清中の陰イオン量を測定する条件の設定は確立した。その成果を昭和61年3月の第56回日本得生学会総会において報告する。以下、今年度の研究実績の概要を 1.ヒト血清を測定する場合において、1時間当り4〜5検体を測定し得る条件(溶離液、測定感度等)を確立させた。 2.血清中陰イオン種としては、【F^-】,【Cl^-】,【Br^-】,【PO(^(3-)_4)】,【NO(^-_3)】,【SO(^(2-)_4)】とさらにいくつかの有機酸が測定可能であった。しかし、【I^-】は測定できなかった。【I^-】をKIとして血管内に注入すれば測定できたので、さらに、測定条件を検討する予定である。 3.今年度の主要設備であるElectron Chemical Detector(ECD検出器)を用いれば、【Br^-】,【I^-】のみでなく、-SH基を有する有機物(蛋白質も含む)を測定できることが判明した。したがって、血清中の-SH基を有する有機物の疾病による変化も検討可能となった。 4.陰イオンの分離能が落ちてくる原因は血清中の蛋白質と陽イオン種であることを見出し、多くの除蛋白法を検討し、この分野においても興味ある知見を得た。 5.血清中陰イオン量の基礎値の変動を検討するために、1年間にわたって男性の健康者13名より採血を行い、現在測定中である。さらに、運動等による変動も考えられるため、種々の条件下での血清を集め、現在一般臨床検査を行っている。 6.健常人ボランティア200名より血清を集め、標準血清を作成した。また、当教室が現有している血清はsubclinicalなものであるため、特徴的な検体として、肝疾患、糖尿病、腎疾患、骨髄腫等の患者の血清を集めた。
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