研究課題/領域番号 |
60870029
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鬼頭 昭三 広島大, 医学部, 教授 (00010140)
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研究分担者 |
松林 弘明 広島大学, 医学部, 助手 (60165850)
下山 政憲 広島大学, 医学部附属病院, 助手 (60136067)
稲垣 忍 広島大学, 医学部, 講師 (90151571)
山村 安弘 広島大学, 医学部附属病院, 講師 (10106388)
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キーワード | In vitro autoradiography / 神経伝達物質受容体 / 定量的解析 / 受容体の絶対数 / 各種変性性神経疾患剖検脳 |
研究概要 |
細胞膜の機能を保持することは細胞の重要な働きであるため、膜上の受容体の分布状態、あるいは病気や薬物による受容体の異常を知ることは、必要不可欠なことである。私共はin vitroオートラジオグラフィーにより得られた像について、その濃度と受容体の絶対数を対応させ、各種神経活性物質の受容体の脳内分布あるいは変性性神経疾患の脳での分布異常を定量形態学的に検索することを目的として実験を進めた。muscarinic acetylcholine receptor antagonistである【^3H】-QNBを標識リガンドとして用い、サルの脳の1方の半球でin vitroオートラジオグラフィーを他の半球で生化学的結合実験を行い、それぞれから得られた受容体の数を比較した。サンプルの切片とスタンダードは同じフィルム上で同時に露出させ、得られたオートラジオグラムからのoptical densityの算出にはZeiss社のIBAS【II】を用いた。その結果、in vitroオートラジオグラフィーと生化学的結合実験から得られた受容体の数は、ほとんど一致していることが認められた。したがって私共の確立した定量的解析は十分に意味のあるものと考えられる。このスタンダードを用いた定量的in vitroオートラジオグラフィーにより、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetra-hydropyridine(MPTP)誘発サルパーキンソニズムの脳、脊髄小脳変性症とアルツハイマー病のヒト剖検脳における種々の神経活性物質受容体の分布異常を調べた。MPTP誘発サルパーキンソニズムの線条体におけるドパミン受容体は、急性期(数週間の病期)では増加が起こっているのに対し、慢性期(数か月〜1年の病期)ではむしろ減少傾向を示すこと、晩発性小脳皮質萎縮症の脳では病期が長くなるにつれてアミノ酸性神経伝達物質受容体の変化が小脳のみならず大脳へも広がることなどが知られた。今後、このような時間経過を併わせた受容体の分布異常の定量的解析を通して、変性性神経疾患の病態を考察していきたい。
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