研究概要 |
昭和60年度においては1呼吸サイクルの気流速度及び胸腔内圧のフーリエ解析法からbreath-by-breathで肺抵抗(Rl)及び動肺コンプライアンス(Cdyn)を求める方法がディスクトップコンピューター一式の購入により容易に行なわれるようになった。本年度はこれらの方法の臨床応用を主に行なった。 1.正常者,気管支喘息者における気道収縮剤吸入時のRl-Cdyn反応曲線の検討:メサコリン吸入時において正常者では反応しない濃度で喘息者ではRlは上昇しCdynは低下した。更に周波数OHzでのコンプライアンス(Co)の低下も認めた。従って後者ではメサコリン吸入により、中枢気道のみならず末梢気道の広範な狭窄が生ずることが示唆された。 2.気管支喘息におけるハウスダスト吸入時のRl-Cdyn反応曲線:ハウスダスト凍結乾燥抗原5倍稀釈液を1分間吸入(Single exposure method)後のRl-Cdynを上記に従がい15分間連続測定した。Rl,Cdynとも変化しない例(【I】型)Rlは変化せずCdynのみが低下する例(【II】型)Rlは上昇Cdynは低下する例(【III】型)の三種類の反応パターンに分けられた。 3.気管支拡張剤の効果の検討:気管支喘息者に【β_2】刺激剤を吸入しRl-Cdynを連続測定すると、まずRlが数分以内に最低値をとりCdyn,CoはRlが最低値になっても増加し続けた。従って気管支拡張剤吸入によりまず中枢気道が拡張し次に末梢気道が拡張するものと解された。 4.レーザー光散乱光による薬物エロゾル沈着量の測定:5〜10呼吸の平均の気道内エロゾル沈着量を測定できるまでになったが1呼吸ごとに連続測定できるまでに至らなかった。今後の研究課題である。中枢・末梢両気道の過敏性分離測定法は確立したと言える。
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