流体中においては流れの速度および加速度情報と圧力情報とが不可分の関係にあり、また心臓では拍動によって生ずるエネルギーは心内血流の圧分布と流動性状に反映することに着目し、パルス変調方式超音波ドプラ法によって得られる血流速度情報から非観血的かつ定量的に心機能の計測ができる新しい方式による計測システムを開発することを目的とした。この目的を達成するために本年度においては次の如き項目について研究を実施した。 1)血流信号高速処理システムの考案と開発:パルス変調ドプラ装置から出力された心臓断面上の多数点の血流速度データを時系列的に入力し、データ処理を行なったのち、その断面上での等速度分布、等加速度分布、流速ベクトル分布、圧力分布およびパワー分布を表示できるシステムを考案し試作した。この試作システムは70MBのメモリーをもち処理結果はカラー表示と共にプロッターを用いて紙上に画像表示できる機能をもたせた。また最終的なデーターの処理方式と表示方式を検討できるようにするためにソフトプログラムの変更が最も容易に実施できるように設計した。この設計により、所期の目的と仕様を100%満しうる研究用システムとして完成せしめた。 2)プログラムの開発研究:1方向からの超音波走査面上における50〜100点の血流速度データから等速度分布図、等加速度分布図、速度ベクトル分布図、圧力分布図、パワー分布図等を求めるためには全く新しい観点に立ったデータ処理および表示プログラムを開発する必要があった。そこで特殊な拡張形補間法を考案導入したプログラムを開発し圧力分布、パワー分布を求める基礎として最も重要なビーム方向を無視しうる流速ベクトル分布図を求められるプログラムを完成した。これにより流速ベクトル分布の20画面が連続的動画的に表示できるようになり、正常心について検討した結果、当初予定の機能が達せられたことが確認され良好な成果が得られたと判断された。
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