新生児黄疸の光療法に用いられている青色光が、試験管内においてDNAの断裂をきたし、ヒーラー細胞でも同様の現象の起こることが報告された。以来多数の研究者により突然変異、姉妹染色分体間の組換え、発癌性、催奇形性等の長期的な障害の起こる可能性が指摘され、しかもビリルビンによってその作用が増強されることが報告された。しかしこのDNAの障害の作用波長が、ビリルビンの光化学反応の作用波長と殆ど同一であると考えられ、光療法に不可避かつ不可分の現象とみなされてきた。しかるにその軽減機構は、主としてビリルビンの構造異性化、即ち(EZ)-サイクロビリルビンが形成され胆汁中へ排泄されることによることが我々により見出され、その後他の研究者により確認された。しかもその波長が従来考えられていたよりも長波長側の緑色光に存在することを示す臨床的な成績がベッキーらにより報告され、俄然この問題が脚光を浴びる所となった。我々はこの点に着目し、代謝の主要な光化学反応経路である立体異性化及び構造異性化反応の波長依存性を検討するために、ヒト血清アルブミン・ビリルビン溶液にキセノンランプを光源として410nmから20nmずつ波長を増加させ550nmまでのバンド幅10nmの単色光を照射し、ビリルビンの光異性体を経時的にHPLCで分析し反応速度論的に解析した。また、同時に各波長での相対的光エネルギー量を測定し、その値で均一化した。光療法中のヒト新生児における血清中の主要な光異性体である立体異性体(ZE)-ビリルビンの生成は410nmの波長が最も多く、510nmの波長が最も少ないことが判明した。逆に構造異性体(EZ)-サイクロビリルビンの生成に関してはDNAの障害作用のない510nmの波長が最も多く、410nmの波長が最も少ないことを証明した。以上の基礎的な知見を基に光源を試作し瞬間マルチ測光検出システムを用いて分光エネルギー分布を測定し、臨床的効果との関係について現在研究中である。
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