臨床脳波を定量的に自動診断する総合処理システムを開発する目的で、以下の試作研究を行った。 1)日常の臨床脳波検査場面で使用するため、本システムはマイクロコンピュータに基づいた小型の装置とし、騒音のない高速のサーマルプリンターで即座に結果の打出しができるようにし、また操作の簡便さに配慮した。 2)大量の脳波データを高速に処理するため、4チャンネル脳波を1単位として16ビット副処理装置で解析し、16ビット主処理装置で複数個の副処理装置を制御する方式と、それぞれが256キロバイトのメモリーを2つずつ制御するデュアルポート方式を採用した。 3)自動診断のための標準的脳波解析部位は、左右の前頭、側頭、中心、後頭部とし、周波数ヒストグラム、各周波数帯域波の出現量、振幅、連続個数など各種の脳波パラメータの値と、多数例の健康人脳波の解析結果に基づく年令別正常値との照合結果を、カルテ用紙大に表示するようにした。(下記文献)。 4)本システムを実際の臨床脳波検査時にオンラインで使用し、また磁気テープに記録した多チャンネル脳波をオフラインで処理し、その操作性、安全性、安定性については満足する結果が得られた。 5)専門医の肉眼的脳波判定結果と比較して、自動診断結果の妥当性を評価した。その結果、92例のてんかん患者の脳波をTraining Dataとし、肉眼的判定結果と自動判定結果とを比較したところ、不一致率は8%と低かった。しかし、別のてんかん患者58例の脳波をTesting Dataとして、不一致率を調べたところ20〜24%であり、肉眼的判定が一致しない例で自動判定結果との不一致率が高かった。 6)今後の課題として、本システムを当病院の中央検査部、あるいは異なった臨床病院の検査部で日常的に使用し、脳波専門医のみならず、脳波検査を依頼した医師や検査技師の評価を総合して改良を加え、普遍的な脳波自動診断装置とする必要があると思われた。
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