1.研究目的 睡眠ポリグラフの自動解析は世界各国で試みられているが成功するには至っていない。その原因は脳波、眼球運動等の睡眠ポリグラフを構成する生理信号の自動解析が必ずしも十分でないことが挙げられる。さらに、これまでの自動解析装置はRechtshaffenとKales(1968)の睡眠段階判定基準に一致させようとするものが多く、この方法では小児、老人、精神疾患等の睡眠を正確に解析できない。そこで、本研究は新しい脳波等の解析方法を用いて、どのような睡眠でも解析できるポリグラフアナライザーの開発を試みた。 2.研究成果 小児、成人、老人の睡眠ポリグラフを記録し、正常人の睡眠ポリグラフのデータベースを作製した。このデータベースを用いて、睡眠ポリグラフを構成している各生理信号の解析方法を検討し、60年度は、解析システムのハードウェアとソフトウェアの一部が完成した。ソフトウェアとして睡眠脳波特にNonREM睡眠中の徐波に関する新しい解析方法と、睡眠経過に伴う出現経過の表示方法を開発した。徐波に関するこれらの方法論を用いて、過去に行った断眠実験のポリグラフ記録を解析した結果、NonREM睡眠中の徐波は断眠時間の長さに比例して増加するが、その増加傾向は徐波を構成している周波数成分(0.5〜3.0Hz)と頭皮上の出現部位によって一様でないことが判明した。この詳細については雑誌(臨床脳波1985)にすでに報告した。 このように試作器は従来の解析法に比べ、徐波成分の解析にみられた如く、より詳細な成分の変化を抽出することが出来、さらに、他の周波数帯域の成分についても同様なことが考えられる。脳波以外の生理学的指標を含めてより総合的な判定基準を作るため、さらにソフトウェアの改良を行いつつある。
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