白血病の診断に、糖鎖抗原を認識する一連のモノクローナル抗体を応用し臨床的に活用するのが研究の目的である。我々はすでに十数種にのぼる糖鎖抗原を認識するモノクローナル抗体を得ているので、初年度はまずこれらのモノクローナル抗体で、正常末梢血、および白血病患者の末梢血・骨髄塗抹標本を、酵素抗体法を主として用いて染色し、血球系統によるこれら糖抗原の陽・陰性の別を検索した。 その結果、顆粒球系に分布する糖抗原を認識するモノクローナル抗体8種と、赤血球系細胞に分布する糖抗原を認識するモノクローナル抗体2種とを見出した。 顆粒球系細胞と反応する抗糖鎖モノクローナル抗体8種のうち7種は成熟顆粒球系細胞とも、未熟顆粒球系細胞とも反応した。しかし白血病細胞の染色性は、顆粒球系に起源したと思われる白血病細胞でも患者症例により区々様々であり、白血病細胞のクローナリティの判断に利用できると考えられた。 顆粒球系細胞と反応する抗糖鎖モノクローナル抗体のうち1種のみは、成熟顆粒球系細胞とは反応せず、未熟細胞とのみ選択的に反応した。詳細に陽性細胞を同定すると、骨髄芽球は陰性であり、前骨髄球と骨髄球が強陽性であり、更に分化が進行すると再び陰性化することが分った。白血病の診断、とくに前骨髄球性白血病を中心とした鑑別診断に有用であると期待される。続いてこのモノクローナル抗体が白血病細胞で認識している抗原の解析を行ったが、糖脂質成分には反応性をもつ抗原は見出されなかった。ひきつづき糖蛋白質性の抗原の分析を行う予定である。 二年計画であるので、次年度には、螢光抗体法、とくにセルソーターを用いたより詳細な分析を行う。
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