本年度は、人工気管と生体気管軟骨の接合部が人工気管開発上の最も困難な点であることを痛感し、これにハイドロキシアパタイトを応用することを検討した。 雑種成犬の頚部気管を一部切除し、ハイドロキシアパタイトで形成した人工気管輪、およびチップを移植し、慢性実験を行った結果、気管軟骨の軟骨細胞がハイドロキシアパタイトのmacroporeの中へ入り込み、良好な組織親和性を示すことが、光顕的、走査電顕的に確認された。現在ハイドロキシアパタイトの軟骨細胞との組織調和性のメカニズムを更に詳細に明らかにするため、鶏胚の大腿骨軟骨を培養し、検討を加えている。また、ハイドロキシアパタイトを人工気管両端の接合部および本体の人工気管軟骨とし、コラーゲン被覆炭素繊維を導管とする人工気管の原型を試作中である。 一方、当初は接合部のみに使用予定であったハイドロキシアパタイトで導管を作成し、PMMAで内面被覆したものを人工気管として応用可能かどうかの検討を行った。光顕および走査電顕での観察で断端気管軟骨との親和性は良好であり、また内腔面への気管上皮組織の伸展が緩徐にみられることが確認された。今後は更に良好な上皮化をめざして、ハイドロキシアパタイトの導管の形状、被覆方法を改良する必要があると考えている。
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