尿管結石を、もし手術をせずに治療することができたとしたら、それは患者にとってすばらしい事であろう。近年この分野においても、内視鏡的治療法が試みられるようになってきたが、私たちも本法に種々工夫を凝らし、尿管結石を非侵襲的に治療することに大きな効果を挙げつつある。使用する尿管鏡は、硬性のものと軟性のものとが考えられるが、本年度は同じ太さで内腔を広くとれる硬性尿管鏡を用いることとし、数種類のタイプ(太さ9〜14F)を試作して用いた。また硬性尿管鏡が尿管内で強く橈んだ時生じる視野の欠損対策として、軟性尿管鏡(太さ5F)も併用した。鉗子のみでは摘出できないような大きな結石の破砕手段としては、振動脆性破壊および水中衝撃波を応用する種々の装置を試作し有効性を確認した。これらの処置を容易に行うためには、まず何よりも尿管鏡の外径を細くする必要がある。そこで冒頭でも述べたごとく9Fの極く細い硬性尿管鏡を試作したが、非常に插入が容易であり、その後は殆どの症例に尿管口にたいする処置をすることなく插入できるようになった。このようにして、結石を直ちに破砕・摘出できたか、少なくても2-3日後に残石が完全に排出したもの121例中81例(66.9%)、結石が、上方へ移動してしまい摘出することが出来なかったもの27例(22.3%)、結石に硬性尿管鏡を到達することさえ出来なかったもの13例(10.7%)であった。また、後日(複数回の尿管鏡操作で)結石を摘出できたもの9例(7.4%)であった。合併症として重篤なものは、尿管断裂の1例のみであった。次年度は、さらに結石摘出の成功率を上げかつ安全性を高めるため、軟性尿管鏡の開発応用についても検討する予定である。
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