ズーム式眼底カメラ(キャノン製CF-60Z)の光学系を用いて、主走査に超音波光偏向素子(松下電子部品製EFL-D750A)を適用し、副走査(垂直)にはGSI社ガルバノメトリックミラーG120Dを用い、Arレーザー(488nm及び514nm波長切替)光を高速走査し、生体眼底像を得ることに成功した。眼底にて反射される光はフォトマルチプライヤ(浜松ホトニクス社製R264)で電気信号に変換され、NTSC方式の画像信号としてTVモニター上に表示される。また、各種画像処理を行うために、画像信号はON-LINEで計算機等へ出力可能とした。画角は20度と60度の2変倍とし、前者の場合、眼底網膜上のスポット径は13×9μm、後者の場合は36×25μm程度になることが判った。解像力は現在のところ水平方向に500画素、垂直方向に483画素程であるが、今后その向上を試みる。画像のコントラストは大変良好であり、また被験者への照射光量は通常の眼底カメラに比して少ない。漏光や散乱光の除去と、受光素子の感度向上により、更に照射光量の軽減を計る必要がある。 本年度の成果を要約すると、(1)超音波光偏向素子を用いることにより、当初考えていたポリゴンミラー方式に比して非常に機械的に安定し、かつコンパクトな型のレーザー走査眼底計測装置の開発に成功した。(2)所定の生体眼底像を全く新しい手法で観測できるようになり、今後計算機画像処理と結びつけて網膜機能の新しい計測法が可能となった。(3)実用化の可能性が大であることが判った。 今後、技術的には解像力の増大、画像処理法の検討などがあり、臨床的にはその応用範囲の検討と、各種生体眼での実験を行う必要がある。尚本年度は、Arレーザーを新規購入、ポリゴンミラー方式を超音波光偏向素子に設計変更したため、幾分予算の変更があった。
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