研究概要 |
エナメル質に接する歯垢の深部はウ触発生の最前線であり, ここでつくられた酸はエナメル質に直接作用し ウ触発生の直接の原因となる 歯垢深部は高度に嫌気的で且つ糖の供給も著しく限定される このような高度嫌気 糖供給制限条件下で歯垢微生物がどの様に糖を代謝し 酸を産生するかを知ることが本研究の目的である. 高度嫌気条件下連続培養装置の試作は本研究計画の中心をなすものであるが, 雑菌混入の確立が高い培地供給チューブの結合, グローブボックス内での大量の培地の移動・運搬, 大量に生ずる培養廃液の処理などの難問を解決し, 高度嫌気条件下で口腔微生物を高度嫌気条件下で連続培養することに成功した. 定常状態に達した嫌気連続培養菌を酸素に触れることなしに集菌することも大きな問題の一つであったが, 嫌気遠心分離用の遠心チューブの試作に成功し, 培養した細菌を極微量の酸素にも触れさせることなく細菌を集めることに成功した. 嫌気グローブボックス内の嫌気度も, 酸化還元電位で-350mV以下の酸化還元電位を常に保ち, 嫌気ボックス内の酸素濃度も5ppm以下に保持する性能上の目標を十分に達成することができた. Streotococcus mutansやStreptococcus sanguisを高度嫌気条件下で種々のpH条件で連続培養したところ, S.mutansはS.sanguisに比べて低いpHで連続培養が可能であり, このような低いpHで増殖した菌は低pHでの糖代謝活性が高く, 多くの酸を産生した. また, 低いpH条件では, ことに高度嫌気条件で乳酸産生への著しい変換が観察された. 糖制限条件下では糖の菌体内への取り込みを触媒する酵素系とグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素の合成が促進されており, これがこのような条件で生育した菌が高い酸産生能をもつ理由と考えられた. S.sailvariusのFructosyltransferaseはカップリングシュガーの構成糖を水解した.
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