研究概要 |
1.最も有力な成人性歯周病の原因菌と考えられているBacteroides gingivalisの付着因子(この場合線毛)に焦点をあてて研究をおこなってきた。 (1)本菌から単離・精製した線毛は、現在のところ、唯一の蛋白質性の精製病原因子として臨床応用が可能な材料である。これを抗原として、酵素抗体法によって抗体価を測定した。(2)同時にウェスタンブロッテイング法と呼ばれる技術(やはり酵素抗体を利用している)を応用して、線毛蛋白質に対する特異抗体が存在するのか否か検索した。 (3)上記の方法で得られた結果は、成人性歯周病患者血清の50%以上から線毛に対する強い抗体活性が検出されることを示した。一方健常人群では線毛に対する強い抗体活性はみられなかった。 (4)患者血清中にはしばしば、B.gingivalis菌の外膜蛋白質と考えられる数種類の蛋白質(たとえば分子量75,000,48,000,47,000)に対する抗体が存在した。特に75,000(75K)の蛋白質は、以前より主要蛋白質として電気泳動上で検出され、注目してきた蛋白質であった。 2.若年性歯周病の原因菌と目されるHaemophilus actinomycetemcomitans(以前にはActionobacillus属に入れられていた)の病原因子は、まだ明確になっていない。容易に単離・精製でき、臨床応用に供すことのできる病原因子(又は特異抗原)はまだ解明されていない。そこで、上記のウェスタンブロッティング法を利用して、患者血清中に存在する本菌に対する特異抗体を検索した。若年性歯周病患者は日本ではきわめて少なく、数+検体を一度に集め測定することは困難である。調べたかぎりでは、本菌の特定の蛋白質に対する抗体が共通して患者血清中に存在するという傾向では見つからなかった。
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