第7回歯顎顔面放射線国際会議に於いて、コンピュータ・グラフィックの手法の1つである光線追跡法を用いたパノラマ断層撮影のシミュレーションを行ない画像処理法の検討を行なった。その結果、複数の単純画像間で2回サブトラクションを行なって画像の濃度を補正するダブル・サブトラクション法が有効であることが判明した。 多軌道断層X線撮影装置(Polytome-U)にX線テレビ装置を付設すると同時に、断層撮影時の装置の支柱の傾き角度を検出するために精度±0.25%のポテンシオメータを取り付けた。また支柱の角度検出をX線テレビと同期させながら行なうための電子回路を作製し、マイクロ・コンピュータに取り込めるようにした。 上記のハードウェアにて取り込んだX線テレビ画像を、ビデオA/Dコンバータにてデジタル化して、ミニ・コンピュータ内に転送し、3次のスプライン関数を2回用いてX線テレビ系の幾何学的歪みを除去した上で、顎関節を対象とした画像再構成を行なった。画像再構成の際に上記ダブル・サブトラクション処理を施したものと施こさないものとを比較すると、処理画像の方が明らかにベースのかぶりが少なく、コントラストも良く画質的に優れていた。ここまでの経過は第17回日歯放関西地方会第6回同九州地方会合同地方会に於いて発表した。 現在は、画像再構成アルゴリズムの変更を検討中であり、画像シフト方式から1軸透視変換方式に移行している段階であり、この方式による顎関節正面断層像の再合成プログラムを作成中である。また、3次元グラフィック端末(LEX-90)を用いた顎関節ソリッド・モデル表示プログラムも作成中であり、関節頭と関節窩の関係をさまざまな視点から視覚的に把えることが可能となる予定である。今後、顎関節二重造影法に本撮影法を適用して関節円板の形態を描出してゆく所存である。
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