研究概要 |
IGF-【I】は1975年、Salmonらにより、成長ホルモンの末梢での作用を仲介する血中の成長因子として発見された物質である。その後、1978年、Humbelらは血中より本品を単離し、その一次構造を決定した。本品は、分子内に3個のジスルフィド結合を有するアミノ酸70個から成るポリペプチドであり、種々の細胞の分化、成長を促進し、成長ホルモンにかわる下垂体性小人症の治療薬として近年注目を集めている。 本品の合成を次の様に計画した。全体を13個の区分ペプチドに分け、それぞれを液相法で合成する。C端より順次アジド法で縮合し、保護IGF-【I】とする。全保護基を1M【CF_3】【SO_3】H-thioanisole系で除去し、次いで空気酸化を行ない目的のIGF-【I】を得る計画である。 本年度の計画は、13個の区分ペプチドの合成であったが、それぞれの区分ペプチドの合成はほぼ完了し、アミノ酸分析、元素分析等の純度分析データーより高純度の区分ペプチドが得られた。また、本合成研究では、システインのSHの保護基としてAd(1-adamantyl)基を用いたが、本基がTFAに対して、MBzl(p-methoxybengyl)基よりも安定であるが、1M【CF_3】【SO_3】H-thioanisole系、【(CF_3COO)_3】TIによって除去可能であり、また酸化に対してもMBzl基より抵抗性を示すことを明らかにした。また、アスパラギン酸のβ-カルボキシル基の保護基としてシクロヘプチル基を用いたが、本基はアミノサクシニル化の副反応を起こし易い配列-Asp-Gly-において、塩基性条件下および酸性脱保護条件下(HF,1M【CF_3】【SO_3】H-thioanisole系)において従来のベンジル基よりも本副反応に対して抵抗性を示すことを明らかにした。 目下、合成した区分ペプチドをC末端部より順次アジド法で縮合し、保護基の付いたIGF-【I】の合成を進めている。ついで、これより保護基を除去し、目的物を得る予定である。
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