研究概要 |
IGF-Iは1975年、Salmoniにより、成長ホルモンの末梢での作用を仲介する血中の成長因子として発見された物質である。その後、1978年、Humbelらは血中より本品を単離し、その一次構造を決定した。次いで、1983年、Jansenらは、IGF-IのcDNAの構造解析により、Humbelらの一次構造の正当性を認めるに致った。本品は、分子内に3個のジスルフィド結合を有するアミノ酸70個から成るポリペプチドであり、種々の細胞の分化,成長を促進し、成長ホルモンにかわる下垂体性小人症の治療薬として近年注目を集めている。 本品の合成を次の様に計画した。全体を13個の区分ペプチドに分け、それぞれを液相法で合成する。C端より順次アジド法で縮合し、保護IGF-Iとする。全保護基を1M【(CH-3)-3】SiOS【O_2】C【F_3】-thoanisole系で除去し、次いで空気酸化を行い目的のIGF-Iを得る計画である。 本年度は予定通り、60年度に合成した、純度の確定した13個の区分ペプチドをC端部より順次アジド法で縮合し、保護ヒトIGF-Iを得た。中間体及び保護ヒトIGF-Iの純度を元素分析,酸分解後のアミノ酸分析により検定した結果、高純度のヒトIGF-Iが得られたものと判断している。また、本ペプチドの合成に際し、システインの保護基としてAd(1-adamantyl)基がMBzl(p-methorybenzyl)基より空気酸化に対して抵抗性を示すことを明らかにしたが、合成品の塩酸-フェノール系で酸分解後のアミノ酸分析の結果、酸化体存在の目安となるS-ヒドロキシフュニルシステインのピークが認められなかったことから、酸化はあまり起こっていないものと判断された。目下保護IGF-Iより全保護基を除去し、空気酸化によりジスルフィド形成を経て、目的物を得る研究を進めている。
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