研究概要 |
1978年, RiderknecktとHumbleは, ヒトインシュリン様成長因子(hIGF-I)の完全なアミノ酸配列を決定した. 後に, この構造はその前駆体のcDNA構造解析によってその正当性が認められた. 成長ホルモンに関連したこの成長因子について多くの生物学的興味が持たれるため, 我々はアミノ酸70個よりなるhIGF-I(分子内に3個のジスルフィド結合を有する)の全合成を行った. 昨年度, 我々は純度の確定した13個の区分ペプチドを縮合することにより, 保護hIGF-Iを合成したことを報告した. 本年度は, その保護ペプチドの最終脱保護, ジスルフィド結合の形成, そして精製過程について報告する. まず, 最終脱保護の前に, フェニルチオトリメチルシランで処理してMet(O)をMetに還元した. 次に最終段階での脱保護を完全に行うために, 以下に示すように2段階の脱保護反応を行った. 1)1Mトリメチルシリルブロマイドーチオアニソール/トリフルオロ酢酸系によりベンジル型の保護基を除去し, 2)1Mトリメチルシリルトリフレートーチオアニソール/トリフルオロ酢酸系でその他の保護基を除去した. 続いて脱保護されたペプチドを, 還元型・酸化型グルタチオン存在下で空気酸化しジスルフィド結合形成を行い, イオン交換クロマト, HPLCで順次精製し, 目的物を0.79%の収率で得た. 本合成品は, 遺伝子工学(リコンビナント法)により合成されたIGF-IとHPLC上同一のretention timeを示した. 現在, 脱保護・精製過程の収率の改善, およびhIGF-Iの生物学的評価について検討中である.
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