近年、わが国において漢方方剤が医薬として広く用いられるようになり、その傾向は今後も増大していくものと思われる。しかしながら、漢方方剤の原料生薬は修治法の差や産地の違いなどを含めた種々の要因により、その品質は複雑多様で、生薬の品質評価法の確立は、今日の社会的な緊急課題となっている。 本研究では、人参、茵ちん蒿、莪じゅつ、生姜などの重要な生薬について、それらの含有成分の化学的解明研究により得られた生薬修治に関する基礎的資料をもとに、GC-MS法によるより一般性の高い生薬の品質評価法の確立を目指した種々の検討を行った。 1)人参:同一オタネニンジン根より調整した白参おゆび紅参の脂溶性成分についてGC-MS分析による比較検討を行い、修治による脂溶性化学成分の変化を明らかにするとともに、水溶性成分、特に白参特有成分であるマロニルエステル型人参サポニンと脂溶性成分との関係を明らかにした。 2)茵ちん蒿:カピラルテミシンAおよびBをはじめとする種々の胆活性成分について、GC-MS法による定性・定量分析法を確立した。また、茵ちん蒿の原植物カワラヨモギに含まれる利胆活性成の季節的変動についてもGC-MS分析を行った。 3)莪じゅつ:屋久島産、中国産、台湾産の各莪じゅつについて、症抑制活性などの薬理活性成分を指標にGC-MS分析を行い、産地による化学成分の差異を明らかにした。 4)生姜:高知県産、静岡県産、中国産、ベトナム産の各生姜について、、辛味成分を指標にGC-MS分析を行い、産地による化学成分の差異を明らかにするとともに、修治法の異なるる乾姜と化学成分の比較分析を行い数々の知見を得た。
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