研究概要 |
初年度計画では不整脈数理モデルの作成および犬冠潅流摘出心を用いたモデルの実験的検証を行った。 (1)不整脈数理モデル:近年の変調副調律およびリフレクション説を加えた不整脈の数理モデル作成した。モデルは、190個の心筋活動節点とこれらをつなぐ約1400個の興奮伝導枝よりなり、節点は心筋の興奮状態を脱分極時間、絶対不応期、相対不応期、再分極時間の4つで記述し、自動能を持つ節点にはその固有周期を与えた。興奮伝導枝の状態はインパルスの前後方向伝導位相、前後方向残余不応期、衡突後の状態指標で規定し、時間経過に伴う興奮の伝播はこれを差分方程式で記述した。不整脈生成機序は、一方向性および両方向性のブロック(【I】,【II】a,【II】b,【III】),房室結節性頻拍などのミクロエントリー,WPW症候逆行性伝導などのマクロ・リエントリー,同一心筋線維の興奮旋回によるリフレクション,変調副調律,虚血心傷害電流などを組み込むことが可能である。またモデルによって不整脈に対する人工ペースメーカの効果を評価できる。 (2)冠潅流心を用いた興奮旋回路作成:交叉循環法による冠潅流出心標本を生体と等導電率の等張性蔗糖・電解質溶液で満たした円筒トルソ容器内に懸吊し、人工ペーシング装置を介して興奮フィードバック回路を作製し、実験的に興奮旋回性不整脈を実現した。これによって、マクロリエントリーの興奮可能間隙や成立条件を明らかにした。 (3)逆解析法の開発:体表面電位から心外膜電位を逆問題によって求める際、同時に心興奮到達時間分布を推定する方法を考案し、不整脈における心外膜電位興奮異常を対照して不整脈の原因判別を試みた。
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