研究概要 |
我々の発見した肥満細胞欠損W/W^vマウスとS1/Sl^dマウスの利用促進をはかるため, W/W^vマウスとS1/Sl^dマウスの特性を書いた小冊子をつくり各方面に配付した. さらにAm.J.Pathol.誌の"Animalmodel of human disease"の項にW/W^vマウスとSl/Sl^dマウスの利用法についての総説を発表した. この総説は米軍病理学研究所(AFIP)から出版されている同名の冊子にも収録されており, 肥満細胞欠損マウスの有用性については国内的にも国際的にもかなり広範に知られるようになったものと思われる. 一方新らしい肥満細胞欠損マウスとしてはW^<sh>/W^nが有望であることがわかった. W^<sh>/W^hマウスの肥満細胞欠損の程度はW/Wvとほぼ同じだが, 貧血はW^<sh>/W^nの方が軽く生育しやすい, またW^<sh>/W^<sh>マウスはオス・メスともに生殖細胞を持っているので, Wsh/WnマウスはW^<sh>/W^<sh>マウスを一方の親に使用することにより繁殖の効率を高めることができる. 肥満細胞欠損マウスを実験に用いる時, 対照としてどのようなマウスを使うかは重要な問題である. 本研究を開始した当初は, +/+マウスあるいは+/+マウスの骨髄細胞を移植したW/W^vマウスを対照にすればよいと考えていたが, W突然変異遺伝子が影響するのは肥満細胞の分化ばかりでなく, メラノサイト, 生殖細胞, 赤血球の分化にもW突然変異遺伝子が影響を与えること, また+/+マウスの骨髄細胞をW/W^vマウスに移植すると, W/W^vマウスの血液幹細胞自身が+/+マウス由来の血液幹細胞に置換してしまうことを考え合わせると, より選択的にW/W^vマウスの肥満細胞欠損症を治療し, 治療したW/W^vマウスを対照として使用すればよいと考えられる. 実際+/+マウスの骨髄細胞をIL-3の存在下で4週間培養すると, 純粋な肥満細胞の浮遊培養が得られるが, この培養肥満細胞をW/W^vマウスに移植することにより理想的な対照マウスが得られた.
|