1.研究目的 遺伝学的統御が進んでいる近交系実験動物、特にマウスおよびラットにおいては、それらの系統の維持繁殖利用にあたって、その系統について既に記載されている遺伝的特性が正しく保持されていることを確認することは実験科学の立場から見て極めて大切なことである。しかし各系統に記載される遺伝的特性は学問の進歩と共に拡大され近年は特にDNAレベルのものが少くない。DNAレベルで分析すると系統内の遺伝的変異も今迄考えられていた以上に大きいことが明らかになってきた。従ってこれらのDNA特性も遺伝学的モニターリングの対象とすることが必要になる。本研究はこの状況に対処するため、近交系マウスを主体に、いくつかのDNAを遺伝的モニターリングの立場から分析する手法の開発についての基礎的研究を進めようとするものである。具体的にはリボソームRNA遺伝子DNAやH-2遺伝子DNA等を対象に、生体から取出した少量の組織からDNAを単離し、高感度のサザンブロット法でなるべく簡易に種々のマウス系統のもつDNA変異を分析する技術を実用化させることを目的としている。 2.研究成果 主要近交系マウスを対象に、生かしたまま尾の半分からエッペンドルフ型遠沈管を用いてDNAを抽出し、これを微量用アガロース電気泳動装置で分離する。制限酵素分解の後サザンブロット法によりマウスIAdのDNAに対するプローブとハイブリダイズするバンドを検出し、いわゆるRFLPを調べることができた。DNAプローブとして28S′リボソームRNA遺伝子の3′末端とそれに続く非転写領域を含む0.7Kbの塩基配列を使う方法を使った分析の結果、いくつかの系統特異な泳動パタンを見出すことができた。以上の分析手法を用いて近交系ラットのRT1遺伝子やリボソーム遺伝子をモニターする方法を開発するため、7系統のラットの尾部からDNAの抽出を試みている。
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