研究概要 |
1.基礎的検討 (1) 抗原の精製ならびに安定化:感染鶏胚漿尿液由来センダイウイルスMN株(SV)および感染DBT細胞由来マウス肝炎ウイルスNu-67株(MHV)を20,000rpm60分3回遠心洗浄し、抗原力価調整後プレートに固相化した。固相化抗原は両ウイルスとも4°Cで1年間安定であった。ウエスタンブロッティング法により、SVで分子量60Kと67Kに、Mycoplasma pulmonisで66Kと92Kに主要抗原を検出した。このような方法は抗原の精度管理に有用と考えられた。MHVについては検討中である。(2) 陽性コントロール血清の精製:SVについてモノクロナール抗体作製のためのクローニングを実施中である。(3) キット化:HRPOプロテインA結合物の作製ならびに凍結乾燥条件の検討,酵素基質の凍結乾燥条件ならびに錠剤化の検討,陽性コントロール血清の安定化の検討を行い,それぞれキット化に適した条件を定めることができた。 2.1号キットの試作ならびに野外試験の実施:基礎的検討結果をもとに、SVならびにMHV抗体検索のためのマウス用1号キットを試作した。キットには2種のウイルス抗原プレートと陽性コントロール血清の他,凍結乾燥HRPOプロテインA,凍結乾燥酵素基質,試薬溶解液,洗浄液,過酸化水素水,反応停止液ならびにピペット類を組み込み、被検血清を準備すれば専用施設外でも直ちに検査できるようにした。また、専門家以外でも正しく操作できるようなマニュアルを作成し、キットに添付した。野外試験にあたっては66機関(20大学、15研究所、8ブリーダー・受託管理企業、23製薬企業)の協力を得て、キットの試用調査を実施するとともに、約3,500検体の血清の分与を受けた。1号キットに対する評価はおおむね良好であったが、MHV抗原の精製と安定化、陽性コントロール血清の力価調整方法、およびマニュアルの内容の一部に改善すべき点が見出された。
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