研究概要 |
本試験研究において、3種類の回転対陰極用複合ターゲットが製作された。それらはCu-Ag、Cu-CrおよびCu-Mo複合ターゲットである。前二者は、電解析出法により作製し、加工法を工夫することにより、ターゲット表面が完全に同一面となる様にした。Cu-Mo複合ターゲットは、銅のターゲットにもリブデンをイオンプレーティングすることにより作製した。モリブデンの厚さは20μmで、銅の表面とは同一ではない。これら3種類のターゲットについて、角度分散法により、1)白色X線のスペクトル、2)特性X線のスペクトル、3)パルス特性の3種類の測定を行った。今光結晶としては、(100)表面の完全結晶シリコンを用いた。分光に利用した反射は、(400)反射である。短波長の特性X線を有する銀、モリブデンからは、(800)、(12,00)、(16,00)等高次の反射による寄与があるため白色X線スペクトルは、一見非常に複雑なものとなった。これは、角度分散法による欠点と言えよう。Cu-Cr複合ターゲットでは、特性線が長波長のため、この様な問題は全く生じなかった。特性X線のスペクトルは、どの複合ターゲットに対しても、ほゞ完全に、Cu【Kα_1】Cu【Kα_2】の二重線が分離され、非常に良いデータが得られた。その結果、AgKα,Mo【Kα^(CuKα)】,CrKα特性線の強度比として、1:1.25:5:3と言う値が得られた。パルス特性を調べるために、マルチチャンネルスケーラーによる時分割測定を行なった。それにより、X線パルスがターゲットのデザインから予測される様な約1ミリ秒の矩形波であることが知られた。しかしながら、実時間の測定では、ゆらぎが大きく、パルス特性の詳細が分らないので、時間に関する自己相関関数による解析を行なった。その結果、自己相関は、完全な鋸歯状になり、実時間測定での矩形波からのズレは、測定強度の統計的ゆらぎに起因していることが判明した。また、パルスの周期を1.01ミリ秒と非常に精密に求めることが出来た。
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