1)吸湿性…予定通り実験が進み有益な知見が得られた。 (i)ポリアクリル酸-ポリ4-ビニルピリジン系コンプレックスについて 微分収着実験から、このコンプレックス-水系の吸湿挙動は無定形高分子-有機溶媒系のそれと同じである。30°Cの実験で水を0.065g/g吸収することによりガラス状からゴム状に転移する。この実験で観察された2段階型の曲線は、2段階型の吸収メカニズムの条件を全て満たしている。第2段階に対する特性時間の濃度依存性も無定形高分子であることを示す。水分率0.065g/g以上で、コンプレックスはゴム状であるが、その時観察されるFick型曲線はフィルムの厚みの効果を示し真のFick型ではない。 またコンプレックスは収着ヒステリシスを示す。これはカルボキシル基-ピリジン環の架橋によるものである。 既存の吸湿性高分子より幾分高い吸湿能力をもつ。水分率の高いところでは、吸収された水分子はクラスターを形成している。吸湿によりカルボキシル基-ピリジン環の架橋は切断されない。 ということなどがわかった。 (ii)ポリアクリル酸-ポリ4-ビニルN-エチルピリジニウム系コンプレックスについて 積分収着実験が進行中である。 2)生理食塩水吸収能力…細管式等速電気泳動分析装置(島津IP-2A)を用いて、分析の最適条件を検討中である。 60年度の実験では初期の目標は達成された。現在進行中の実験については昭和61年度に結論を得る予定である。
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