織物など繊維集合体のぬれ速度測定装置を考案し、試作した。両端に多孔性平板白金電極をとりつけたテフロン製のセル中に繊維束や織物を詰め、下端を液体に接触させると毛管現象によって液体がセル中を上昇し、上部電極に液体が接触すると電極間の抵抗が低下する。試料のぬれが進むにつれて抵抗値の変化がおこるので抵抗値の経時変化を自記記録することにより繊維集合体のぬれ速度を調べることができる。この原理に基づいて装置を試作し、セルロースフィルターを試料として用いてぬれ速度の測定を行い、抵抗値-時間曲線の解析から試料のぬれ速度が測定できることを明らかにした。試作装置を用いてセルロース系繊維集合体のぬれに及ぼす市販柔軟剤の影響を調べたところ、標準使用濃度においてもぬれが悪くなることが明らかとなった。そこで市販柔軟剤の主成分であるカチオン界面活性剤のぬれに及ぼす効果を検討した。カチオン界面活性剤として塩化アルキルトリメチルアンモニウムを用い、アルキル基の炭素数を変化させて実験を行ったところ、炭素数が増加すると低濃度でぬれが悪くなる現象がみられた。塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウムのいずれにおいても低濃度領域で疎水化(接触角の増大)がおこりぬれが悪くなるが、濃度が増すとぬれがよくなる傾向(接触角の減少)が認められた。こうした現象は繊維基質への界面活性剤の吸着層構造によって説明できる。また、臨界ミセル濃度以上の高濃度ではぬれ速度がおそくなるが、これは繊維の膨潤のためと考えられる(第24回油化学研究発表会、筑波、1985年10月発表)。ぬれに及ぼすアニオン界面活性剤の影響(第37回日本家政学会年会、東京、1985年6月発表)や接触角測定法の検討(第38回コロイド及び界面化学討論会、長崎、1985年10月発表)も行った。
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