研究分担者 |
岸本 文貴 住友化学生命工学研究所, 主任研究員
荻野 重男 住友化学生命工学研究所, 所長
小林 哲幸 東京大学, 薬学部, 助手 (50178323)
梅田 真郷 東京大学, 薬学部, 助手 (10185069)
工藤 一郎 東京大学, 薬学部, 助教授 (30134612)
OGINO Shigeo Sumitomo chemical Co. Ltd.
KISHIMOTO Fumitaka Sumitomo chemical Co. Ltd.
|
研究概要 |
本研究では, 大腸菌のシグナル配列依存的なタンパクの膜移行に関する機構解析を行い, 遺伝子光学による産物の生産に利用することを目指した. 具体的には, 大腸菌外膜に局在する唯一の酵素であるdetergent-resistantホスホリパーゼA(DR-PLaseA)のシグナル配列を利用した. 本配列は, 遺伝子構造解析の結果によると20残基のアミノ酸からなり, 中央部に疎水的アミノ酸コアを持つ典型的なシグナル配列の性質をもっていた. 1.酵素前駆体の生化学的, 遺伝学的解析:DR-PLaseAの構造遺伝子であるpldAを含むDNA断片を材料に, 試験管内転写翻訳系で得た産物は, 精製酵素と比較して若干大きいことがわかった. また, pldA遺伝子を制限酵素HinfIとDNA合成酵素で処理し, シグナル配列をコードする遺伝子に挿入変異を入れた. 変異酵素は前駆体のN末近傍に一残基アミノ酸が挿入された構造をしている. 活性は親株の約1/3であり, 修飾によるプロセシングの低下を引き起こしたものと予想された. 2.酵素の局在性:構造遺伝子をクローニングすることによって多量生産されたDR-PLaseAは, 親株同様に外膜に局在していた. 3.シグナル配列を含むベクター:シグナル配列に相当する遺伝子の下流直後に複数のクローニングサイトを持ち, 上流にpldA, tac.コンセンサス, ラムダーPLの各プロモーターを持つベクターを構築した. 4.ヒト遺伝子への応用:合成ウロガステロンあるいはリゾチーム遺伝子に応用したところ, ラムダープロモーターの場合に成熟タンパクの生産を確認した. しかし, 発現量は低かった. これはプロセシング効率が悪いためと考えられた. 大腸菌外膜への膜タンパク輸送のためには, シグナル配列に加えて成熟タンパク中に存在する特徴的構造が必要であると考えられる. この部分の同定を引き続き検討していく.
|