電気泳動は今日の生化学の研究に欠かすことの出来ない手段となっているが、ゲル電気泳動などの相対的な手法が中心になっている。しかし、電気泳動移動度の絶対値を必要とする局面も少なくない。かつて広く用いられたチセリウスの電気泳動装置は今日の現場の要請に応えがたい。本研究はこの状況を踏まえて、今日的な電気泳動移動度の絶対値の測定装置を試作しようとするものである。 試作に当っては最初から普及装置に円滑に移行できるものを手掛けるという設計思想を採用し、コンパクトな光学台の上下に光源、泳動セルそして測光系をすべて収容した。正負の電圧を交互に発生する電気泳動用の電源を含めて主要部分は製作を終わっている。試作装置は30、60そして90度の角度において散乱光を測定することができる。前二者は動的光散乱電気泳動そして第三は単純な動的光散乱測定用である。測定された散乱光強度の揺らぎはコンピューター(PC 9801/VMO)により相関計算を行っている。現在、ラテックスを試料として予備測定を行なって、移動速度と印加電圧の間に直線性を認めうる段階に達している。 上記の試作の進行に当っては大学関係者とユニオン技研(株)の関係者の間で密接な連絡及び協議を行ってきた。両者の合同打合せ会は既に昭和60年の7月26日、9月21日、12月27日、そして61年1月19日、2月26日の5回にわたって開催している。大阪圏以外の分担者にあっては、白浜(佐賀大)が2回来阪して打合せに参画した。また、須沢(広島大)は標準ラテックスを調製し、ゼーターポテンシャルを顕微鏡電気泳動法で確定してから供給し、装置の性能検定に寄与した。今後は試作装置の性能のテストに入るので、これまでに勝る緊密な協力体制で進むことにしている。
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