研究概要 |
まず、放射性廃棄物固化体を評価する上で最も重要な固化成分の浸出特性について、従来行ってきた硼珪酸ガラス固化体からの成分浸出特性値の整備充実を計った。その結果1価の金属酸化物【M_2】O(M=Na,L,Cs等)の成分浸出率は高く、他成分の浸出をも促進する。2価のMO(M=Ba,Sr,Mg,Ca等)は、それ自身及び他成分の浸出率へもあまり影響せず、ほぼ一定である。これに対し、3価の【M_2】【O_3】(M=Al,Na,Y等)はそれ自身の浸出率も低く、【M_2】O,MOの浸出率をも著しく抑制する効果があるなど、成分浸出特性に関する経験則を見い出した。実際に、高温高圧水下での【Y_2】【O_3】/【Al_2】【O_3】,MgO助剤添加の窒化珪素セラミックスの腐食挙動に於ても、この経験則に従って粒界相成分の浸出特性が支配的であることも実証した。セラミック固化体については、昨年度迄に得られた最適焼成条件を用い、シンロックプロセスによる高アルカリ含有模擬放射性廃棄物固化体を常圧焼結法により作製し、その水熱条件下での浸出試験を行って、従来のガラス固化法との比較を行った。その結果、200℃〜300℃での水熱条件下での浸出試験では、セラミック固化体の比重量減は、ガラス固化体(PO-500)に比べ、1桁低い値を示した。また、300℃での浸出試験後の試料の性状は、ガラス固化体とはmmのオーダーで内部まで侵食が進むのに対し、セラミック固化体では極く表面の数十μm程度しか侵食されず、セラミック固化体の健全性が確められた。浸出試験における主な浸出イオンはアルカリイオンであり、【Li^+】と【Na^+】の浸出率の比較では、ガラス固化体,セラミック固化体ともほぼ同じオーダーであった。これらの浸出率のアーレニウスプロットから求めた活性化エネルギーは、セラミック固化体で約5Kcal/molでこの値は従来のホットプレス焼結体の値と一致する。一方、ガラス固化体では、7〜15Kcal/molと高く、両者の固化体からのイオンの浸出過程が異なることなどを見い出した。
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