1.理論的検討 負イオン表面電離法によって、中性分子(【X_2】)を高感度で検出するためには、解離(【X_2】→2X)及び電離(X+e→【X^-】)の達成率が100%に近いことが望ましく、この問題を化学平衡論の立場から詳細に検討した。その結果、最適な実験条件を一般的に表示する理論式の導出に成功した。この成果は、エルゼビアー社から原著論文として今春刊行される予定である。さらに、この一般式をヨウ素分子に適用した場合については、既に昨秋の日本化学会中国四国支部大会(於松山)で講演じ、また、その詳細は、日本質量分析学会の機関誌に投稿中である。 2.実験装置の試作と開発 負イオン表面電離型の新イオン源を試作開発すると共に、手許の小型質量分析計を改造し、さらに、模擬ガス(極微量のヨウ素を含む空気)とその簡易導入系を調製して、実際にテスト実験を行なったところ、ヨウ素負イオンの検出に成功した。現在、検出感度の向上を求めて、イオン化用表面材料の選定実験を反復しており、これを第2年度(61年度)の主要継続課題として、取組む予定である。 3.新現象の発見 上記の実験中に、ヨウ素負イオンよりも強大なピークが、高質量側に観測された。実験条件や方法などを色々に変えて、比較対照実験を行なったところ、縮合表面電離によって、電子親和力がヨウ素よりも更に大きな別種の陰イオンが生成されることを発見した。この成果については、現在、更に詳細な検討を続けているが、この現象を活用すれば、核燃料再処理後の排ガス中に含まれる極微量の放射性ヨウ素129を、極めて効率的に検出できることになる。本件については、第2、第3年度の継続課題と並行して、更に検討を進め、実用化を推進する予定である。
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