細胞または細胞器官を、それらの形態とその刺戟に対する変化の特徴より、判別する装置の開発が、本研究の目的である。既製の透過光ならびに螢光の強度比を細胞判別の指標としてきた細胞判別装置を、60年度研究実施計画に従って改良した上で、次の主要な結果を得た。 1.レーザー・フーリエ変換形態情報処理における電算画像処理CGの活用:細胞または細胞器官の複雑な回折像を直接特徴抽出する前に、回折像がCGによりまず概観された。3次元形態を、散乱点集合で、その間隔を波長より順次狭め、しかも出来る限り少数で表示することが試みられた。入射した平面波をフラウンホーファー回折する各散乱点の位相差はそれぞれの光路差により算出された。回折強度は、各散乱点が同じ寄与をする場合、各位相因子の和の2乗に比例する。その強度比は各ピクセルに10段階の濃淡で表示された。解析的に解が得られている、矩形スリットおよび球体の回折像と、簡略化された散乱点集合の回折像との強度分布の差を求め、精度が算出された。こうした比較より必要に応じて簡略化した散乱点集合回折像のCGは、複雑で雑音の多い生体形態情報処理におけるイメジ形成を高めることが確められた。 2.抗原抗体被覆マイクロスフィア標識による細胞表面における特異部位の空間分布の決定:リンパ球表面のIgG部位の分布を測定し例証した。人末梢血リンパ球にAnti Human IgG Rabit IgGを反応させ、IgG特異部位の分布をつくった。第2抗体であるRabit IgG Goatで被覆した屈折率の高いポリスチレンの精度のよい5μ直径の球体マイクロスフィアがIgG部位に標識され、CGにより容易に球体の分布は決定できるので、抗原抗体被覆球体標識により、細胞表面の特異部位の分布が決定できることが確められた。
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