この研究は単なるCAIシステムの開発ではない。マイコンの機能の発達に伴って、中学校・高等学校における数学教材のCAI化がようやく広まりつつある。これは、生徒の能力・到達度・学習の自己設計などの多様化に対応するために望ましい方向ではある。しかし、そのようなソフトウェア設計とくに数学教育のコースウェアを設計してみると、現状のカリキュラムに沿って作成したのでは、その機能を十分に果たし得ないことが判明してきた。 現行のカリキュラムは、急ごしらえの、多様化対応であることは否定できない。我々数学教育研究グループは、さきに次世代のカリキュラムの一つの理想像としてコア・オプション・モデュールを設計したこれに引きつづいて、コンピュータ活用を折りこんだカリキュラムの設計を計画したのである。 このカリキュラムを仮に、Through Computer Curriculumと名づけ60年度は「微分と積分」のコースを設計した。生徒がコンピュータを自在に使い、反対に教師側からも適切な情報等を提供し、正しく、生徒が、ノート、黒板、鉛筆の代わりにマイコンを使用する学習である。 CAI教育で注意しなければならない数学教育上の問題点は、計算力の欠如、論理的思考の欠如などである。しかしこれらの問題点は実はCAIにあるのではなく、現在、教育上の問題点である。我々は逆に我々の設計したシステムにより、それらに十分対応することが出来るとともに、生徒の多様化に十分対応できる教材を設計したと考えている。目下、代数幾何分野の教材作成に進んでいる。 作成した教材は、筑波大学附属駒場中学校・高等学校で61年3月実験に供される。また8月の日本数学教育学会、日本科学教育学会の年会で発表する予定である。
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