早期診断システムの中心となる骨X線画像処理ソフトウエアの開発と、電位測定による関節軟骨変性度の定量的評価法の開発を行なった。まず、ソフトウエアの開発に関しては以下の成果があげられる。 1.臨床撮影した大腿骨X線像を計算機に入力し(0.1mmサンプリング間隔、8ビット52×52画素)、画像処理の対象となる大腿骨上端部を輪郭抽出により自動的に切り出した(128×128画素)。 2.骨梁と呼ばれる線状パターンに着目し、パターン線密度の定量的評価法を開発。(1)1次元の最大エントロピー法を用いて骨梁パターンのスペクトル解析を行なう。シミュレーションにより最大エントロピー法の有効性を確認したのち、生体外に取り出した大腿骨標本のX線画像に適用し、骨梁線密度と一致するスペクトルピークを得た。(2)次に生体内大腿骨の臨床X線画像に本法を適用。大腿骨頚部付近の第1次引っ張り骨梁群に対しスペクトル解析を行なった結果、骨粗鬆症の進行により線密度が低下することが確認された。さらに、医師の判定による骨粗鬆症の進行度と線密度は良い相関を示した。(3)以上の画像処理がミニコンで出来るようアルゴリズムの開発を行った。次に関節軟骨の変性度の定量法については以下の結果を得ている。 3.変形性関節症の早期診断の指標として、軟骨の持つ静電位に着目し、電極を用いた測定法及び測定装置の開発を行った。(1)膝蓋骨より摘出した関節軟骨に対し生体内と同じ状態(リンゲル液平衡)で計測を行う。(2)セラミクス電極を種々改良し、関節軟骨の表層から深層にわたって再現性良く電位分布を計測可能とした。(3)測定された電位は負で、平衡液のNaイオン濃度に対し、理論計算による結果と同じ変化をしめした。(4)軟骨の層内での電位分布は、プロテオグリカン量と良く相関しており、染色法による組織像の変化とも一致していることから、変性度の定量的評価が可能となった。
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