微小物体をリアルタイムで立体視するために、走査型電子顕微鏡を開発した。 通常の走査型電子顕微鏡では、電子銃から出た電子線が、収束レンズと対物レンズを通って、試料上に焦点を結ぶ。この場合、電子線の照射方向は顕微鏡の光軸とほぼ一致する。今回開発した双眼走査型電子顕微鏡においては、対物レンズの下に偏向レンズを取りつけた。これにより、電子線は顕微鏡の光軸とある角度をもって、試料に入射する。第1回目の走査では、電子線は左の方から入射して、試料上を走る。第2回目は、右の方から入射して、第1回目の次の線上を走る。第3回目は、次の線上を第1回目と同じように左から入射して走る。第4回目は、第3回目の次の線上を右から入射して走る。以下、同じ走査方式を繰返す。奇数番目の走査で得られた2次電子の強度は、輝度に変えて、左のブラウン管に表示される。偶数番目の走査で得られた2次電子の強度は、右のブラウン管に表示される。すなわち、左のブラウン管には、電子線が左から入射したときの試料の像が、右のブラウン管には、右から入射したときの像が表示される。これら2つの像を立体鏡を使って観察することにより、試料の立体視が可能となる。 双眼走査型電子顕微鏡で得られる左右2枚の2次電子像を使うと、表示されている試料の3次元形質を解析することができる。この解析をデジタル化して行ったときに生じる誤差を検討した。今、画素の大きさをPとすると、高さ方向の誤差は、±P/2tan(θ/2)を両端とする三角分布をなす。ここで、θは視角である。一方、横方向の誤差は、視点の内側では、-PX/2XoからPX/2Xoまでを上底とし、-P/2から P/2までを下底とする台形分布をなし、外側では、-P/2からP/2までを上底とし、-PX/2XoからPX/2Xoまでを下底とする台形分布をなす。ここで、-XoとXoは視点の横座標、Xは対象とする点の横座標である。
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