1.がん検出用光応答性色素の迂生とその光化学特性に関する研究 (生越、会沢、山下) 本研究目的に沿った光応答性色素の合成は、天然由来のプロトポルフィリン、クロロフィルから得たフェオホルバイトを生理的条件下で水溶性色素に変換する方法、ピロールより誘導した水溶性ポルフィリン、さらに含フッ素ピロールより組立てた含フッ素ポルフィリンを合成した。また補酵素フラビン内基本骨格に【CF_3】基をもつイソアロキサジン誘導体を合成した。上記物質はいずれも光照射により低濃度においても極めて強い蛍光を発すること、また【^(19)F】-核磁気共鳴吸収スペクトルによる測定で生体組織内の検知可能であることが判明した。光応答性色素が光励起され、一重項から三重項へ遷移し、末端組織内に存在する酸素分子を一重項に励起する。この仮説に基いて、ルミノール反応で合成色素が一重項の酸素を生成するかを検討したが、構造上の因子と対応するような活性相関はみられない。即ち色素の会合状態が重要であるという結論に達した。 2.光応答性色素の癌細胞に対する特異的認識作用 (生越、会沢、加藤、三宅) 移植がんをもつマウスにフッ素をもち、かつ蛍光収率の高いポルフイリン、またイソアロキサジン誘導体を静注し、その全組織の連結片について色素の分布を調べた。特に含フッ素ポルフィリンの集積は癌組織に対して高く、蛍光および【^(19)F】-NMRによってその存在を確認することが可能となった。含フッ素色素は【^(19)F】-NMR測定器の分解能の限界から、さらに高濃度の集積性が要求されるであろう。癌に対する選択的集積性はポルフィリンの構造によって微妙に変化するので今後継続的な研究が必要とされる。
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