研究概要 |
昨年度までの研究で、ヒトT細胞ハイブリドーマH3-E9-6が、ヒト単球の抗腫瘍活性化のためのプライミングシグナル(MAF-CI)と、トリガリングシグナル(MAF-C【II】を放出することを観察したが、本年度はこれらの部分精製を行ない、MAF-C【I】は分子量およそ30,000,MAF-C【II】はデオキシコール酸存在下分子量およそ40,000を示すたんぱく質であることを確かめた。H3-E9-6からのこれらの因子の完全精製と、遺伝子クローニングを現在実施中である。一方MAFを産生する他のヒトT細胞ハイブリドーマHM-89-11,HM-17-12よりはMAFのmRNAを精製し、Okayama-BergのCos7細胞発現ベクターを用いてCDNAライブラリーを作製した。さらにヒトマクロファージ様細胞株U937のPMA依存性【O(^-_2)】産生を増強する因子MAF-Oを放出するヒトT細胞ハイブリドーマF4-29-4を樹立し、このmRNAを抽出し、13,OS附近に沈降することを観察した。現在これについてもOkayama-Berg法を用いてCDNAライブラリーを作製中である。またこれらのMAFの臨床応用の基礎をかためるため、MAF-C【II】を、表面に抗A375細胞単クローン性抗体を結合させた免疫リポゾーム中に、マウスγインタフェロンと共に封入したのち、A375細胞を移植したヌードマウスに投与したところ、MAF-C【II】溶液投与の場合にくらべ、はるかに効果的にA375細胞の増殖を抑制することを見出した。さらにまたヒト単球活性化においてヒトγインタフェロンは、脂溶性ムラミルジペプチド誘導体封入リポゾームと相乗効果をもつこと、その相乗効果発現機序としてγインタフェロンによる単球のリポゾーム貪食亢進作用が第一段階として重要であることがわかった。これらの研究は、MAFやムラミルジペプチド誘導体をリポゾームに封入して投与することが投与剤型として極めて有効であることを示唆し、またγインタフェロンとの併用が効果的であることを示し、臨床応用へ向け前進できた。
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