がん遺伝子および関連遺伝子の染色体マッピング

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61015001
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 吉田 廸弘 北海道大学, 理学部, 助教授 (60001765)
• 研究分担者: 阿部 周一 北大, 理, 助手 (80125278) ; 高木 信夫 北大, 遺伝子実験施設, 助教授 (20001852) ; 佐々木 本道 北大, 理, 教授 (70000817)
• キーワード: がん遺伝子 / in situ ハイブリダイゼーション / マッピング / がん特異的染色体異常 / がん遺伝子発現

研究概要

1.がん遺伝子のマッピング:srcがん遺伝子に属するyes,erbB,ros由来の7種のがん遺伝子のヒト染色体上への位置づけを行った。yes関連遺伝子として、プロトyesであるc-yes-1は18q21.3上へ、yes-1の僞遺伝子であるc-yes-2は22q11上に位置づけした。第1染色体上へ位置づけしたc-fgrはアクチン遺伝子との結合はなくv-fgrと異ったものであること、さらに先にc-src-2と呼ばれ1p34-p36に位置づけされていたものはc-fgrであることが分りこれに改められた。c-synは6q21へマップした。erbB関連遺伝子のc-erbB-2は17q21へマップした。この遺伝子はラット癌細胞から分離したneu遺伝子と同じであることが分った。ros関連遺伝子、c-ros-1は6q22上へ、c-ros-2は13q12上へと夫々マップした。ヒト以外では、H-ras-1をラット1q43上へ、c-sisをラット第7染色体上へ、また肝癌発生に関連しているグルタチオンSトランスフェラーが遺伝子を1q43上へ位置づけした。
2.がん特異的染色体異常とがん遺伝子発現:白血病および悪性リンパ腫180症例の染色体分析を行い、新たな特異的異常として、t(7;11)転座をAML,CMLで、逆位iuv(3)をCMLで、t(6;18)転座を瀘胞性リンパ腫でそれぞれ見い出した。Instuハイブリダイゼーションにより、t(7;11)では、no.11上のras遺伝子が転座によりno.7へ移動しているのが分ったが、CMLの転座ではrasはno.11に残っていた。同様な転座にもかかわらず症例により分子レベルでの切断点が異っているものと思われる。また、AMLにみられた【Pb^1】染色体上には、no.9由来のabl遺伝子が移動してきていることが分った。また、【Pb^1】染色体がみられるCML由来のB細胞株においてノーザンブロット法により、bcr-abl遺伝子のmRNAの発現を分折したが、その転写活性はみられなかった。【Pb^1】染色体上にはabl遺伝子が転座しているにもかかわらず、CMLにおいては、必らずしもbcr-ablの転写活性を件うものではないことが分った。

研究成果

• [文献書誌] Nishizawa,M.: Molecular Cellular Biology. 6. 511-517 (1986)
• [文献書誌] Fukucihige,S.: Molecular Cellular Biology. 6. 955-958 (1986)
• [文献書誌] Semba,K.: Proc.Natl.Acad.Sci USA. 83. 5459-5463 (1986)
• [文献書誌] Matsukage,A.: Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 77. 330-333 (1986)
• [文献書誌] Masuda,R.: Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 77. 1055-1058 (1986)
• [文献書誌] Yoshida,M.C.: Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 77. 1059-1061 (1986)
• [文献書誌] Sato,Y.: Cancer Genet Cytogenet.23. 37-45 (1986)
• [文献書誌] Abe,S.: Mutation Research. 173. 55-60 (1986)
• [文献書誌] Mise,K.: Cancer Genet.Cytogenet.
• [文献書誌] Dosaka,H.: Int.J.Cancer.
• [文献書誌] Okabe,M.: Blood.
• [文献書誌] 吉田廸弘: 病態生理. 5. 780-788 (1986)