研究概要 |
腫瘍細胞の血中への游出率を測定するCTCR Assay(N.Suzuki;Cancer Res.43,5451,1983)は、これまで主としてC3H/HeのFibrosarcoma FSA1231-1233及びNFSA2ALM1を使って開発・検討されてきた。これまでの結果の普偏性を調べる為に違ったtypeの腫瘍の解析が必要である。本研究では、新たな腫瘍系としてC3H/He由来の移植可能な自然発生の扁平上皮癌NRS1への応用の可能性又、その腫瘍細胞游出過程に対する放射線照射の効果を電磁波放射線であるX線,高LETのニュートロン線について解析した。NFS1腫瘍細胞を下肢に移植後、いろいろな時期でCTCR Assayによる游出率測定を行ない、また一方、下肢腫瘍から肺への自然転移(頻度及び率)も調べた。下肢腫瘍への局所放射線照射のある無しの種々の条件下で游出率・転移率を定量した。ここで得られた結果は、 1)これまで調べられたいろいろな腫瘍系(FSA系,NFSA系,MeWoヒトメラノーマ)を含め腫瘍細胞(コロニー形成能のある)の游出率(下肢に移植された腫瘍から)は、その(自然)肺転移率と密接な関係があった。何らかの方法で游出率を下げれば転移率も低下することを示唆する。実際に下肢に移植増殖中のNFSA2ALM1からの腫瘍細胞游出を抑えるため、下肢腫瘍を週に一度局所照射すると、腫瘍が治らない線量でも肺転移を抑制できることが確かめられた。 2)移植された腫瘍に対する放射線照射の効果については、まだ中途であるが、現在のところ、腫瘍細胞の血中游出率は線量依存性に低下することが分かっている。
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