研究概要 |
【I】新に分維されたニワトリ腫瘍ウイルス2種とヒトC-myc遺伝子により癌化したラット培養細胞の解析が進展し、その結果からmyc,fos各遺伝子による発癌機構の一断面を考察した。 YM-1は癌遺伝子としてmycをもつレトロウィルスであることを明らかにした。ヒナに接種すると急性白血病を起し、in vitroでマクロファージをトランスホームするがmycをもつ他のウィルスとは異りfibroblastをトランスホームしない。従って標的細胞特異性と遺伝子構造の関係を解析する怜好のモデルになると考えられたため、ゲノムを分子クローニングし、塩基配列を決定したところ、他のV-mycとは異り、対応するC-myc遺伝子と全く同じ構造をもつことを明らかにした。他のウィルスのゲノムの一部との遺換実験から急性白血病にはC-myc産物の量産のみで充分であるが、fibroblastのトランスホーメションには突然変異を伴う必要があることを示した。腎臓腫瘍から分維したウィルスNK24はヒナに骨肉腫,線維肉腫,腎芽細胞腫を誘発する。ゲノムを分子クローニング1,癌遺伝子としてfos遺伝子をもつことを見出しその構造的特徴を明らかにした。ヒトC-myc DNAをラット3YI細胞にトランスフェクションしたところ腫瘍原性の高いトランスホーム細胞が得られた。この細胞ではトランスフェクションしたDNAD異常に増幅し、再編成していた。そのためにC-myc RNAそしてmyc蛋白の発現が多い細胞となり、高い腫瘍原性を示すと推定された。 【II】アデノウィルスの癌遺伝子、EIAの機能解析は酵母の系で進展した。酵母での誘導発現ベクダにEIA遺伝子の種々の変異株を挿入したプラスミッドを作製した。酵母内で変異蛋白質を発現させた結果、135mRNA個有のアミノ酸配列が酵母細胞周期のlate G1期での増殖停止に関与していることが示唆された。このG1 arrestに関与している機能と動物細胞での転写促進機能とが、EIA遺伝子の同じ領域によることが解った。
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