研究概要 |
本研究は新抗癌剤開発への一つのアプローチとして展開された。アスペルギルス属かび、(二次代謝物)に由来するbisindolylbenzoquinone体(アステリキノン)の生物活性については、従来ほとんど知られていない。われわれは不活性天然アステリキノン体に特定の構造修飾を加えることによって、抗腫瘍活性化しうることを見出し、種々検討してきたが、これら誘導体は溶解性,収得量などの点で不備があった。そこで天然アステリキノン体の構造ー抗腫瘍活性相関についての研究でえられた成果にもとづき、monoindolylbenzoquinoneに種々の極性原子団、例えばピラチン環あるいはモルフォリン環を含むアルキルアミノ基を導入した水溶性化合物20数種を合成し、invitro及びinvivo抗腫瘍性などについて検討した。えられた成績は次のごとくである:1)培養L5178Y細胞に対する増殖抑制では、約半数の化合物が【IC_(50)】0.1〜1.0μg/mlの範囲にあった。2)しかしL5178Y及びMeth-Aなどの腹水腫瘍及びエールリッヒ固型腫瘍に対するinvivo効果では、天然物(不溶性)に優越するものはえられなかかった。3)DNAポリメラーゼ(α,β,γ)、RNAポリメラーゼなどに対する活性阻害は、bisindolyl体に比較して低弱であった。4)なおこれら合成アステリキノン誘導体の抗体産生系への影響は僅微であり、また抗菌作用については、ブドー球菌の諸株に対しMIC12.5〜25μg/mlを示したが、諸他の菌に対しては無効であった。 以上、本年度の研究では、一応抗腫瘍活性を示す合成アステリキノン体を収得しえたが、なお活性の面で不十分であり、また分子サイズ,導入極性基,及び体内動態に関連して投与スケジュールに問題があるとみられ、今後これらの点について検討を進める。
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