研究概要 |
1.IL-2産生,IL-2受容体発現に至るT細胞活性化初期変化の一つとして、T細胞刺激後の細胞内遊離Ca濃度、〔【Ca^(++)】〕iの変化を、Quin2を用いて検討した。PHA,抗T3,抗T11抗体により正常T細胞を刺激すると、2〜3分以内に急激な〔【Ca^(++)】〕iの上昇がみられる。T細胞性慢性リンパ性白血病(T-CLL)では、この〔【Ca^(++)】〕iの上昇反応は正常であったが、IL-2受容体を構成的に発現しているATL患者白血病細胞では、抗T3抗体刺激後の〔【Ca^(++)】〕i上昇反応が悪く、T細胞受容体1T3を介するT細胞活性化機構の異常が示唆された。2.T-CLLにおけるIL-2受容体発現。6例のT-CLLのうち3例は、白血病細胞は、【T3^+】【T4^+】【T8^-】のいわゆるヘルパーT細胞抗原を示し、IL-2に反応して増殖した。1例では、新鮮白血病細胞がIL-2受容体を発現し、IL-2結合試験、SDS-PAGEによる解析では、正常IL-2受容体と異なる点は認められなかった。残り3例は、【T3^+】【T4^-】【T8^+】【Tac^-】で、加えたIL-2にも反応しなかった。3.T-CLLの1例より、白血病細胞由来でIL-2依存性に増殖する長期培養T細胞株を樹立した。この細胞株(kit225)は、細胞あたり190,000の低親和性、3,000の高親和性IL-2受容体を発現し、IL-2依存性に増殖する。サザーン法では、IL-2受容体遺伝子の明らかな増幅や大きな再構成は認められず、また、HTLV-【I】,【II】プロウイルスの組み込みも認められなかった。上記2,3の結果は、少なくともT-CLLの一部において、IL-2受容体を介する細胞増殖が、白血病細胞の腫瘍性増殖に関与している可能性を示唆し、この点は、今後の検討課題の1つであろう。
|