我々は抗腫瘍活性を持つシソ科ジテルペノイドの構造活性相関の研究から同一分子内に複数の活性中心を持つ化合物は相乗的な活性増強が認められる事を既に見い出している。この基礎研究の上に立って我々は強いマイケルアクセプターであるα.β-不飽和ケトンと同時にエポキシ環を有する5員環化合物を分子設計し、合成に成功した。このものは予想通りP388に対しin vitroで強い殺細胞作用を示したが、予期に反してin vivoでは効果を示さなかった。この主たる原因は本化合物の化学的不安定性によるものであると考えられたのでこれを解決するための分子設計として次の二通りの方法で現在アプローチを試みている。先づ第一には化合物自身の安定性の増大を目的とする分子設計、第二には投与時には不活性型であるが生体内で非酵素的に化学変化を受け活性型になることを期待出来る様な化学修飾である。特に後者はプロドラッグ的な観点からの分子設計であり、この様なタイプの化合物ではin vitro活性は弱いがin vivoでは強い活性発現を示すことが多い。この様な考えのもとに現在まで計20ケの新化合物を合成し、実に9ケの化合物についてin vitroで活性を認めた。中で極めて強い活性を示した化合物、および分子設計的にin vivoでは強い活性発現の可能性の高い化合物を選択し多量合成を行い、現在in vitro試験中である。
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