研究概要 |
HeLa細胞よりC群色素性乾皮症細胞に欠損しているDNA修復因子(C因子)の単離を試み、以下のような特長を明らかにすることができた。C因子は核に存在し、Kcl濃度を0.4M以上に上げないと溶出してこない。トリプシン処理で失活し、陽イオン交換体に結合することから、塩基性の核タン白であると考えられる。Sephacryl S-300によるゲル濾過により、その分子量は約55万であった。このC活性を有する分画には、A,F,G群のxp細胞を相補する活性は検出されなかったが、B群を相補する活性(B因子)が検出された。しかしこの分画を更にDNAセルロースで分画するとB因子とC因子は異なる分画に検出されることから、両者の間に強い相互作用は存在しないものと考えられる。次にC因子のC群xp細胞内での安定性をその残存活性量の測定から調べてみた。C活性は細胞質へ注射後約4時間で最高値に達し以下少くとも24時間内に活性の減少は認められなかった。また粗核抽出液の状態でC因子は極めて安定で4°Cで少くとも2ケ月は活性の減少は認められなかった。またC因子の細胞当りの総量は紫外線照射の前後で変化しないことから、前核細胞における修復因子のような誘導性のものではない。C活性はヒト以外の動物からも検出され、ウシ及びマウス細胞より調製した抽出液中のC因子のクロマト上での挙動、分子量共ヒト由来のC因子と同一で、C因子は種を越えてかなり共通した構造を持っていることが推定される。現在マウス腹水ガン細胞よりC因子の精製を試みており、陽イオン交換,ゲル濾過,DNAセルロース等のクロマトを組み合わせてその比活性を数百倍上げる段階まで精製を進めることが可能となったため、この標品を用いてDNA修復に関与すると考えられるいくつかの酵素活性の有無を調べている。
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