研究概要 |
台湾ヒノキの精油成分であるヒノキチオール(4-isopropyltropolone)を原料として、筆者らが開発した方法で合成した新規なビストロポン誘導体〔α,α-bis(2-hydroxy-6-isopropyltropon-3-yl)tolueme類(【1!〜】)〕が強い制がん作用を有することに基づいて、その作用と化学構造との相関および作用機序を精査し、新しいタイプの制がん薬を創製することを目的として本研究を実施してきた。 構造と活性との相関については、本年度は【1!〜】のトロポロン環部位の分子修飾が活性発現に及ぼす影響、および【1!〜】のベンゼン環が活性発現に必須な部位であるかどうかを検討した。これらの構造活性相関の結果より、【1!〜】の制がん作用の発現は生体内の微量金属と分子内の2ケ所でキレートすることによるのではないかと想定され、これに基づきキレート能を有する非トロポン誘導体を分子設計し、合成した。その結果、P388担がんマウスに対し【1!〜】に匹敵する強い延命効果を示すビス-8-ハイドロキシキノリン誘導体〔α,α-bis(8-hydroxyquinolin-7-yl)-4-methoxytoluene(【2!〜】)〕を得ることができた。このものも【1!〜】と同様に新規制がん薬開発のリード化合物として有望であると思われる。 作用機序については、【1!〜】は〔【^3H】〕-チミジンのDNAへの取り込みを強く抑制したことから、DNAに関与している金属依存性酵素の阻害が考えられたので、分子内に2個の鉄イオンを有するribonucleotide reductaseに対する【1!〜】の作用を検討した。その結果、1および【2!〜】は本酵素を阻害することにより、deoxynbonucloside triphate poolに異変をもたらし、その結果DNA合成を阻害することが明らかになった。 今後は、【1!〜】及び【2!〜】の臨床試験にむけての、作用機序を考慮した水溶性化、プロドラッグ化等の分子修飾を行う。
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