研究概要 |
本研究では、某大学病院より胃がん患者群と対照群を選び(性、5才以内の年令を対応)、食習慣などを中心に、両群の比較・検討を行ない、胃がんのリスク要因を同定しようとした。ここに記すのは、データを収集し、電算機解析迄可能となった患者群150例と、同数の対照群、計300例についての結果である(面接は350例をこえて進行中)。1.胃がん群の組織型別分類では、intestinal type,男53例、女20例、diffuse type,男35例、女42例で、男ではintestinal typeが、女ではdiffuse typeが多い。2.人口学的特性(年令、身長他)をみると、患者群と対照群(以下両群と記す)に、明らかな差はない。平均年令は両群ではよく一致しているが、男女間では男の方が、約3.6才年令が高い。3.飲酒との関連はみとめられない。4.喫煙との関連もみとめられない。5.食物の摂取方法に関して、(1).食事時間の規則性について両群間に差はない。(2).しかし夜食や間食は患者群がより頻回にとる(P<0.01)。6.(1).米飯の摂取量は患者群に多い(3620g対3400g/週)。(2).殊に30才の時は5610g対5050g/週と患者群が多く摂取している(P<0.05)。7.変異原性が知られ、動物で発がん性が示される焼魚については、(1).頻度に有意の差はみられず、(2).焼き方を好む程度にも差はなかった。8.味噌汁は、患者群がより多くのんでいた(8.1対6.9杯/週、P<0.05)。これは最近の他の研究者の報告に反するものである。9.緑黄色野菜では、両群に差はみられなかった。10.卵、肉類にも差はみられない。11.漬物では、患者群がより漬物を好む(たかな漬、P≒0.01)。12.患者群はより塩魚を好む(P<0.05)。11.12.は、食塩の発がんのプロモーション作用が分っており興味深い。以上端的にいえば、患者群はより夜食や間食の習慣があり、多量の米飯を好み(殊に若年時)、塩魚、漬物等塩味のものを好む傾向が示された。
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